就活で外コンを無双した彼が、内定を全て辞退した理由#承認欲求男子

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白石 大樹

【早稲田大学(休学中/20卒)】【Inno-BUTA編集長】 大学受験の挫折やフィリピンでのボランティア経験より形成された《尽力》という価値基準を基に、長期インターンの紹介事業に従事。エージェントとして通算100名以上の学生とキャリア面談を実施する傍ら、NPO法人で難民支援にも取り組んでいる。

 

明治大学(商/5年)に、武藤雅和(むとうまさかず)さんという方がいる。

 

近年の経歴を簡単に紹介すると、大学2年の終わりからIT人材総合支援のベンチャー企業で長期インターンを経験。メディアや媒体の要件定義から開発まで週7で取り組み、大学3年時にはベトナムで現地エンジニアを運用しながらオプション開発も行った。そんな彼は就活で外資系コンサルティング会社(外コン)を中心に無双しながらも、最終的にはたばこ産業の企業に就職を決めている

 

なぜ彼は全く別の業界に就職を決めたのか?

長期インターンや就活を皮切りに話を聞くうちに、彼の原体験が見えてきた。

活中のキャリアエージェントから見た武藤さん

私は、2017年9月から長期インターン専門のキャリアエージェントとして活動を始め、既に1年以上が経った。弊メディアのインタビューも含めると、実に100人以上の大学生と人生について語り合ってきた。とはいえ人生と言えど、結局帰結するのは就活の話が多く、「外コンや外資系銀行(外銀)、商社に受かるためにどうすればいいのか?」という相談を受けることも少なくない。

 

志望する理由を聞くと、日本のプレゼンスだとか世界を変えたいだとか御託を並べておいて、結局は“憧れ”に辿り着く人が多い。この“憧れ”は実際に大学生の中にあって、マッキンゼーやBCGなど戦略系の外コンに受かると超一流、デロイト、PwC、アクセンチュアなど金融系や総合系の外コンに受かると一流のようなランク付けが存在するし、それらは就活生同士の会話を聞いていても感じるところがある。

 

スコット・ギャロウェイ(著者:『the four GAFA-四騎士が創り変えた世界』)の言葉を借りるのであれば、より良いモノを保有することで、より良い異性とセックスをしたいというのは人間の性(さが)である(らしい)。優秀で賢く見られるためにiPhoneやMac、iPadを人々は使うし、社会の中で勝ち組として存在意義を確立するために有名な企業に就職する。外資系志望の大学生が抱く“憧れ”もそんなところだろう(本当か?w)。

 

ところが、武藤さんはその外コンに就活無双しながらも全て辞退し、最終的には日系企業に就職を決めている。

そんな彼の動機や原体験が気になってきたところだ。

認欲求を満たすだけの就活でしかなかった

武藤さん
僕はミーハー就活でして。外コンであったり、とにかく給料の高いところであったりを中心に就活をして、全てから内定を頂きました。ただ、そこで壁にぶつかったんですね。
だいき
内定を沢山もらった後に?
武藤さん
そうですね。結局、目的の無い就活というか、世間的に評価の高いところに内定をもらっても全く選択出来ない自分がいました。言ってしまえば、承認欲求を満たすためだけでしかなかったんですね。

承認欲求とは、他人から認められたいとする感情の総称である(引用:Wikipedia)。

人は誰しもこの欲求を持ち合わせているのだが、この欲求が強い傾向にある人は過去に何かしらのインパクトのある経験を有する人が多い。これについては、これまで多くの人と面談をしてきた印象でしかないが、確かなものがあると思う。

 

彼のルーツ(原体験)はどこにあるのだろうか。

(写真:ベトナム時)

武藤さん
他者評価を気にして生きてきたので、自分軸が本当になかったんですよ。自分軸で意思決定したと思っていたことも、全部他人からの評価が基準。実際に就活を始めて内定がポンポン取れ出したときに、全然喜びが無くて。
だいき
僕だったら飛んで喜びます(笑)
武藤さん
僕の今までの生き方だったら満足出来たはずなんですよ。でも、不安でどうしようもない状態になってしまい、初めはどこか自分を満足させるfact(事実)を探していました。給料良いとか、外コンとか、そういったfactで自分を満たそうと思ったけど出来なくて
だいき
承認欲求に他者評価ですか。このルーツについて話を聞いても良いですか?

絶な過去。うつ病の父と彼。

武藤さん
僕はサラリーマン家庭ではなく、実家が動物病院を営んでいるんですね。父親が獣医で母親がそれを手伝ってという環境で育ちました。
武藤さん
父親は開業する際に祖父(医者)や他からもお金を借りていたんですけど、そのせいもあってかなりハードに働いていて。そうした中で父親が病気になってしまって…。

「自宅には100~200万円ほどのパワーストーンがあったり、本棚には宗教系の本がずらーっとあったり」と話す武藤さん。そうした父親のもとで骨を折られるほどのDV(ドメスティックバイオレンス)を受けながら育ってきたそうだ。

武藤さん
そういう家庭環境だったので、ただただ父親に気を遣っていて。「この人が喜ぶために、それに付随して病んでいる母親を喜ばすためにどうすれば良いんだろう」ってのが、承認欲求のルーツでした。

非常に明るく、好青年の印象を受ける武藤さん。会話の随所でボケを入れるなど進んで場を盛り上げている彼からは、想像が難しい過去の経験だった。

武藤さん
だから、小学生の時は代表を務め、勉強もスポーツも1位の超優秀な万能くんを演じておりました。思春期で父親と距離を取ってからは女の子に目覚めて、モテるためになんちゃって不良の道に入ったんですけどね(笑)
だいき
はー…。色々なことがあったんですね。

己否定が苦手な彼が、クソほど自己否定した。

だいき
就活の話に戻しますけど、実際に内定を沢山もらって、自分軸が無いという壁にぶつかった後にどうしたんですか?
武藤さん
色んなメンターの方に、相談しに行きました。ある人には「自己承認欲求を満たすだけの人間」と言われ、ある人には「自己否定ができていない、自分を見つめ直せ」と言われ(笑)そこで、自分の本質と向き合ってみることにしました
だいき
具体的に何をしたんですか?
武藤さん
自分の部屋に3日間閉じこもって誰とも会わずに、自分の本当に嫌いなところをノートに書き出しました。20枚ぐらいは書き出したと思います。

(写真:嫌いなところを書き出したノート)

だいき
普通は自分の“弱み”とかだと思うんですけど、何で“嫌い”なところなんですか?
武藤さん
弱みって恰好つけていて。結局、抽象度が高くて本質に辿り着かないんですよ。例えば弱みって表現だと、“計画力がない”とか“リスクヘッジが出来ない”とかって感じになると思うんです。でも、その本質って“怠惰”とか“やる気がない”とか、もっと汚い言葉が出てくるはずで。
武藤さん
他者と自己分析するのも同じで、結局カッコいい事しか言わない。本当のことを腹割って話せることって少なくて。だからこそ、自分がクソな人間だって思うほど、嫌いなところを徹底的に書き出す途中、自己嫌悪に陥ったり、手が止まったりするんですけど、それを乗り越える。その方が自分味が出る。

そんな武藤さんが最終的に腹落ちしたのが、“自分自身と向き合える人でありたい”という想いだそうだ。今まで他者の評価を気にして自分を決めてきたからこそ、現在は“自分がどうしたいのかという感情“を凄く大事にしているという。

 

「好きなものもない、無感情、無関心な自分でしかなかった。だからこそ、僕はこれからの人生、自分の弱みや嫌いな部分を含めて向き合い続けられる環境や、人と一緒に仕事をしたい」と話す彼は、個々人がどう在りたいかを追求する社員の揃う会社に就職する。

てを取っ払って、見えてくるのが自分。

家庭環境で培われた承認欲求。他人から認められるために生きてきた人生が就活で弾け、そこから自分自身と真剣に向き合い続けてきた武藤さん。そんな彼だからこそ、こんな質問を投げてみた。

だいき
“自分軸”ってよく聞きますけど、言葉が独り歩きしていると思っていて。武藤さん流で良いので教えてください。
武藤さん
難しいですね。僕の場合は全ての肩書(とか外部要因)を取っ払って、武藤雅和ってものだけを残したときに湧き出る感情だと思っています。
武藤さん
自分だけが存在する、そんな中で湧き出る好きや嫌い、こうしたい、こう在りたいとか。それらが自分軸なのかな?でも、これって気づくのが本当に難しい。掘っても掘っても見えてこない自分の本質と向き合い続けることが大事。
だいき
自分以外の全てを取っ払うか。では、何で向き合うことが大事だと思いますか?
武藤さん
主観ですけど、時代背景的にもこれからは会社や国で生きるわけではない。戦時中は国で生きて、高度経済成長を経て会社で生きるようになった。でも、この時代は個人なんですよ
だいき
個人主義って言われますもんね。
武藤さん
そう。この移り変わりの激しい時代、正解がない時代において、自分と向き合えていない人間って多分積んでいるエンジンが弱くて自分がどう生きたいのか、どう在りたいのかをちゃんと他者に発信出来る。これが無いと社会で価値のない存在になってしまうと思っています。話をしていても、自分を持っている人間は魅力的に見えますよね。

「就活だけを見据えている人間は、中長期的な視座を持つべき」と話す武藤さん。実際に“憧れ”の外コンに内定を多く頂いても満足できず、そこから自分と真剣に向き合い続けた彼の言葉は説得力がある。

 

「俺はここに人生をかけてきたんだ!」「俺はこう在りたいんだ!」っていう視座の人間と仕事がしたいと話す彼は、近い将来に実家の動物病院を経営することになる。逃げ続けてきた自身のルーツ(家庭環境)に向き合うことを強く決心した彼の今後を、陰ながら応援していきたい。

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