バンドでNHK出演。そこからビジネスへ向かった地方男子の尖りと展望

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白石 大樹

【早稲田大学(休学中/20卒)】【Inno-BUTA編集長】 大学受験の挫折やフィリピンでのボランティア経験より形成された《尽力》という価値基準を基に、長期インターンの紹介事業に従事。エージェントとして通算100名以上の学生とキャリア面談を実施する傍ら、NPO法人で難民支援にも取り組んでいる。

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名古屋の南山大学に通う(正確には9月卒業なので通っていた)、榮 勇登(さかえ ゆうと)さんという大学生がいる。個人的にはかなり異端児であるとの認識だが、そんな彼の経歴を簡単に紹介すると、誰もが驚嘆するであろう。

 

彼は、大学1年から3年の夏まではギターボーカルとして作詞作曲し、自らレーベル(CDを制作し、販売する団体)を立てて、タワーレコードでCDをリリースしたり、NHKに出演したりするほどバンド活動に熱中していた。その後、そこまで没頭していた音楽活動を休止し、タイ・インドでセールスインターンを経験。帰国後にもメガベンチャーで新規事業開発、Web広告代理店の大手企業でクライアントの広告代理運用を経て、現在は音楽事業を立ち上げる傍ら、スタートアップでセールスインターンをしている。

 

ここまで、国内外問わずに多彩な活動を経験している大学生は類を見ないが、そんな彼に、なぜバンド活動からビジネスサイドに転身したのか?なぜ、セールスインターンにこだわるのか?を中心に取材をしてきた。

※本稿では営業をセールスと表現しております。

立つ異様さ

僕が早稲田大学に入学した2015年の当時、長期インターンという言葉は今ほど浸透していなかった。長期インターンの斡旋をしている弊社の過去データを分析しても、1・2年生の段階で長期インターンにチャレンジしようとする学生の割合は増えている。ミクロを全体論として語るのはリスクがあるものの、同世代の人間と話をしていても誰もがそのような回答をするので、一定の的を射ているはずであろう。僕が入学した当時は、「大学生活は人生の夏休み」という神話が蔓延り、多くの学生が大学受験のストレスで弾け、ひたすら青春(遊び)を謳歌していた。

 

とはいえ、長期インターンが学生市場に浸透しつつあると仮定しても、1学生が大学生活の中で経験するそれは、せいぜい1~2社が「普通」である。半年以上の勤務が市場原理である長期インターンを5~6社経験するとなると、単純計算で2年次から大学卒業まで、ひたすら企業で働かなければならない。

 

だからこそ、榮さんの異様さが際立つ。名古屋という物理的に距離のある地で大学生を全うしながら、国内に限らず海外も含めて長期インターンを5~6社ほど経験している。ちなみに、僕は1社でしか長期インターンを経験していない。正直に、そこまで様々な企業を渡り歩くのは物理的にも精神的にも厳しいと感じている。

 

そんな彼の進路に対する意思決定の動機に興味が湧き、知りたくなってきたところだ。

ディスラプター(破壊者)の強烈な過去

(写真:ギターボーカルとして活躍する榮さん)

だいき
僕はバンド事情をあまり知らないので、NHK出演やCDリリースなど成功しているように見えるんですけど、そこまで没頭していたバンド活動をなぜ休止して、ビジネスに転身したんですか?
榮さん
名古屋にはONE OK ROCKの二番煎じ、三番煎じみたいなバンドがいて、高校時代からずっと見ているんですけど、何も思考せずに今パッケージ化されてる音楽をそのまま模倣してるようなスタンスが滅茶苦茶嫌いで。

ずっと既得権益をディスラプト(破壊)したいと考えていたんですけど、音楽のプレイヤーとして活動をしている以上は影響範囲が小さいので。だったらビジネスサイドに入って、音楽事業という形でそれを実現した方が早いと思ったんですね。

※既得権益:ある社会的集団が歴史的経緯により維持している権益のこと

だいき
なるほど。確かに枠組みを壊した方が影響力ありますし、早いというイメージは湧きます。
榮さん
ただ、これは個人的な課題感ですけど

彼は20人ほどのチームで先頭切って、作詞作曲に限らずプロモーションの戦略立案を担当していた。しかし、全ての意志決定を自分でやりすぎるが故に他者の意見を聴かなくなり、モチベーション低下を理由にメンバーが脱退した強烈な体験がある。

 

小さい頃から自己主張が強すぎて友人が離れる経験をしてきたが、此度でそれが顕在化し、「自分を変えないとまずい」ことに気付く。以降、傾聴力を身に付けるためにセールスインターンをしてきた

榮さん
相手が本当は何を想っているのか分からないまま、勝手に自分の意見を押し通そうとするのが自分の弱みで。今もそれをずっと抱えていて、それを解決するための手段を学べると思い、セールスのインターンを始めた

セールスって、相手のニーズを引き出して、そのニーズに合わせて商品を買ってもらう。この一連のプロセスが日常生活でも転用できると思ったんですね。

だいき
なるほど。普段僕が面談する学生だと、傾聴力ではなくてコミュニケーションスキルを高めるためにセールスをやりたいって人は多いんですけど、実際にそうしたスキルが高まった実感はありますか?
榮さん
どうなんでしょう。ちょっとずつ良くなっていると思いますけど、まだまだですね。

そうしたスキル(傾聴力、コミュ力)を高めるためには、セールスではなく内部でコミュニケーションを取る機会を多く設けた方が良いと語ってくれた。彼はタイでのインターン時にセールス、マーケ、エンジニアの間で指示を送る企画(ディレクション)に近い役職に就いた際に、それを痛感したという。というのも、セールスにはビジネスの型が存在し、日常生活で転用できる部分が少ないというのだ。

 

その事に気づいた上でもなお、彼はその後のインドでも朝8時から深夜2時までゴリゴリの飛び込みセールスインターン、そして現在も、ロジスティクス系のスタートアップのインターンでセールスを継続して行っている。話を聴きながら不思議に思っていたが、そこには別の動機があった

※ロジスティクス:物流において生産地から消費地までの全体最適化を目指すこと

本としてのセールススキル

(写真:音楽事業に取り組む現在)

榮さん
あと、セールスのインターンをやる理由に、差別化できるという観点もあります。
だいき
セールスで差別化?
榮さん
今の就活生って、企画とか新規事業開発とかマーケとか、そういうことをやりたいという人が多いと思っていて。

となると、同世代が10歳上がったときに、差別化できるスキルってもしかしたらセールスなのかもしれないと仮説を立てています。「一旦セールスを尖らせた方が、実は面白いのでは?」という節がありますね。

昔はビジネスと言えば、セールスが花形であった。時代が変化していく中で、マーケや事業開発がキャッチーに聞こえ、セールスは泥臭くて末端社員のやるようなイメージが定着してきたと話す。メディアを通して作り上げられた偶像にブレインコントロール(洗脳)されている現代人だからこそ、敢えてセールススキルを高めることで差別化を図っているのだ。

榮さん
それに、セールススキルは普遍的。Googleの台頭でWebマーケ、SNSが発達してソーシャルマーケが勃興してきたように、マーケは専門的で、かつ時代によって変動しやすい。でも、セールススキルは身に付ければ一生使える。
だいき
どういう時に使えます?
榮さん
これは、長期インターン先の社員さんも仰っていたのですが、結局のところ相手のニーズを引き出して、そのニーズに対して商品を売るって、マーケも企画も根本は同じなんですよね。

仕事に限らず、就活の面接も同じ。人事が何を求めているのか(ニーズ)を瞬時に見極めて、それにあった訴求をしていく。そしてそれは、セールスで身に付けることができる

「“顧客のニーズに対して価値を提供する”という根本は変わらず、価値を提供するHOW(方法、アプローチ)が違うだけだ」と僕の上司も話をしていた。だからこそ、セールススキルはすべての職種に通底しており、経験して損はないそうだ。

 

今回は異端児である榮さんが、なぜバンドからビジネスに転身したのか?なぜ、セールスインターンにこだわるのか?を中心に取材した。「優秀な人は挫折経験がない」という独断と偏見をしばし小耳に挟むが、彼らも当然人間で、人知れない想いがあることに気付けた。彼は今後どのような活躍をしていくのだろうか。引き続き、陰ながら応援していきたい。

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